今月の臨床 臨床遺伝学─診療に必要な最新情報
着床前遺伝子診断
末岡 浩
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.1130-1135
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101563
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はじめに
生殖医学の発展と同時に遺伝学の発展も進み,その融合分野の新たな医療技術として,着床前遺伝子診断(preimplantation genetic diagnosis : PGD)の概念が発生した1).さらに,その具体的な背景には体外受精技術の発達と安定化があり,加えてPCR法やFISH法などの遺伝学的情報の診断を単一細胞から得ることができるようになったことがこの技術の必要条件となっている.
その一方で,技術的な発展とは別に倫理面での議論が表在化した.特に本邦においてはこれまでに妊娠と遺伝学,具体的には出生前診断の意義とそのあり方などについての公開された議論が行われてこなかったことや,本邦固有の歴史的背景についての理解が十分に浸透していなかった事実は否めない.この点を明らかにし,新たに公開した議論の形でさまざまな意見のなかから本邦での実施のあるべき形が議論され,現在の実施に至ったことも特記すべきことである.
本稿では着床前遺伝子診断を実施する際の対象や審査,技術,問題点など,現在すでに得られている新たな情報について論ずることにする.
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