特集 図解 産婦人科医のための臨床遺伝学必修知識Ⅱ
4.絨毛採取と羊水穿刺の選択と長短所
関沢 明彦
1
A. Sekizawa
1
1昭和大学医学部産婦人科学講座
pp.893-899
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002667
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確定的な出生前遺伝学的検査として絨毛採取(CVS)と羊水穿刺(AC)が臨床で一般的に利用されている。CVSは,一般的には妊娠11~13週に行われる一方,ACの最適な実施時期は妊娠15~17週である。CVSの結果は,ACの結果よりも早期に得られるため,胎児に関する情報についての不安な気持ちで待つ期間の短縮につながる可能性がある。また,妊娠中断を選択した場合,CVSではより妊娠の早期に処置が可能であり,リスクが低いと考えられる。CVSで採取するのは絨毛細胞である一方,ACで採取する羊水は,尿,分泌物,剝離細胞などの胎児の物質が主成分であるため,出生前遺伝学的検査のみではなく,胎児の感染症,溶血性貧血の程度,血液型,神経管欠損の評価など胎児の状態を評価するための臨床検査に用いることができる。出生前遺伝学的検査の場合,CVSの結果は胎盤限局性モザイク(CPM)の影響を受けることがあり,ACよりも診断の精度は低く,CVSでモザイクの核型が示された場合にはACが必要になる。また,CVSは妊娠中期前半のACに比べて手技的に難易度が高く,検査には熟練が必要である。検査後のfetal loss率を踏まえた安全性においてもCVSにやや難点がある。
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