発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016291569
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86歳女。12歳頃に急性虫垂炎に対して開腹虫垂切除術を受け、術後合併症なく経過・退院し、以後も問題なく経過していた。当院受診の2ヵ月前、虫垂切除術創部に皮下硬結感を覚え、放置していたところ硬結の増大傾向を感じたため近医受診し、皮下腫瘤の疑いで当院に紹介された。右下腹部に径7cmの手術瘢痕があり、創部のほぼ中央の皮下に径4cmの硬結を触知した。創部表面に発赤を伴う膨隆を認め、膨隆は自壊し膿が流出していた。局所麻酔下に創部を切開したところ便と便汁の排泄を認め、盲腸皮膚瘻(糞瘻)と診断した。原因として、手術創部に腹壁瘢痕ヘルニアが形成され、何事もなく経過した後に盲腸末端のRichter型瘢痕をきたし、部分的な腸管壊死となり皮下感染を発生させ、瘻孔形成に至ったことが考えられた。治療は初め保存的加療を行ったが改善しないため、保存的加療は短期間で中止し、手術療法(瘻孔部切除+盲腸部分切除術)を施行した。切除標本の病理組織所見は腸粘膜と皮膚の連続を認め、唇状瘻と診断した。術後経過は良好で、1年後の現在まで再発徴候は認めていない。
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