発行日 2011年11月1日
Published Date 2011/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2012184030
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例は73歳女性で、胸背部痛を主訴とした。造影CTで上行大動脈に入口をもつ大動脈解離を認めたが、弓部3分枝・下行大動脈・腹部3分枝には解離は認めなかった。DeBakey分類II型の急性大動脈解離と、それに伴う心タンポナーデを発症したものと診断し、大動脈解離手術を施行した。術中、心尖部送血で中心冷却中に膀胱温30.5℃、食道温28.7℃の時点で大動脈基部が破裂し、上行大動脈と総大腿動脈から送血を行った。しかし、脳酸素飽和度(rSO2)が低下した為、選択的脳灌流に変更したが、灌流開始まで約30分間を要した。その後、大動脈基部および上行大動脈置換を行った。術後8日の造影CTで弓部3分枝・弓部-下行大動脈に、術前CTでは存在しなかった偽腔の存在が認められた。術中上行大動脈送血時の偽腔送血などにより解離腔が進展した可能性があり、術中のrSO2の低下は解離の進展に起因した脳虚血と考えられた。経過は良好で、術後11日に退院となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2011