発行日 2010年11月1日
Published Date 2010/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011034188
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77歳女。右後頸部痛と嘔吐が出現し、救急隊到着時JCS 30、右共同偏視、左片麻痺を認めた。救急搬送され、来院時の胸部CTで腕頭動脈・左鎖骨下動脈にフラップを認め、Stanford A型急性大動脈解離で弓部分枝への解離進展による脳虚血が意識障害の原因と考え、緊急開胸術を行った。人工心肺下に発症3時間後より膀胱温24℃で循環停止し、選択的脳灌流を行った。正確なエントリーの確認はできず、上行大動脈置換術を行い、手術時間4時間20分、総体外循環時間2時間7分であった。膀胱温35℃の状態で人工心肺から離脱し、ICUで膀胱温34.5℃を目標に40時間の低体温療法を開始した。その後26時間かけて徐々に復温を行い、意識の回復を確認した。術後94時間目に抜管し、118時間目にICUを退室した。退室時CTで右中大脳動脈領域に広範囲な脳梗塞像が出現し、弓部3分枝を含む大動脈に解離が残存していた。左上下肢の軽度筋力低下を認めたが、リハビリテーションで改善し、解離の悪化もなく術後21日目に独歩退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2010