発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007346110
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緊急手術を施行した術前脳malperfusionを伴った急性A型大動脈解離8例を対象として、その予後について検討した。中枢側の合併症として、重度の大動脈弁逆流を2例、心タンポナーデを2例、下壁急性心筋梗塞を1例に認め、2例がショック状態であった。術前の神経症状としては、片麻痺または不全麻痺を全8例、昏睡を1例、中等度の意識障害を2例に認めた。病院死亡は8例中2例(25%)であった。このうち1例は術前より昏睡と左片麻痺を認め、手術翌日に右中大脳動脈領域の広汎な脳梗塞と脳浮腫がみられ、術後4日目に死亡した。他1例は術前より下壁急性心筋梗塞と右不全麻痺を認め、ショック状態で手術を開始し、翌日に低心拍出量症候群で死亡した。生存した6例のうち1例では、術前の左片麻痺に加えて術後新たに対麻痺が出現した。術前左片麻痺および中等度の意識障害を認めた2例では、ともに意識障害は改善したが麻痺は残存した。残り3例では術前の片麻痺および不全麻痺は改善傾向が認められ、うち1例ではほぼ回復した。術後昏睡合併例では予後不良であり緊急手術は避けるべきであるが、昏睡を伴わない症例では神経症状改善を認める症例もあり、緊急手術も考慮してよいと考えられた。
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