発行日 2010年9月1日
Published Date 2010/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2010320102
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31歳男。屋外で転倒した際に左前胸部を打撲し、X線の右前斜位で心陰影の前方に石灰化病変を認めた。胸部CTでは前縦隔、肺動脈幹と左縦隔胸膜に接して、不連続性の石灰化様の殻をもつ2.1×1.7×4.1cmの腫瘤を認め、MRIで石灰化部分は低信号を呈した。胸腺原発の奇形腫あるいは石灰化を伴う胸腺腫を疑い手術を行い、腫瘍は硬度かつ可動性不良で、周囲への浸潤も疑われたため、両側横隔神経、甲状腺下極、両側横隔膜直上までの胸腺組織を郭清し、腫瘍を胸腺と共に一塊として切除した。術中迅速診断で腫瘍は胸腺原発の粘表皮癌と診断され、気管周囲~大動脈周囲のリンパ節を郭清した。摘出標本肉眼所見で石灰化を伴った4~5mmの壁厚の嚢胞状病変を認め、病理組織学的には充実性~索状の胞巣形成した扁平上皮様の部分と腺様の部分を認め、扁平上皮様部分では一部核の大小不同がみられた。以上より、正岡分類I期の胸腺原発粘表皮癌と診断した。術後3年の現在、無再発で生存中である。
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