発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008236405
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85歳女。腰椎圧迫骨折、右肘窩織炎の診断で入院加療中、胸背部の痛みが出現した。なお経過中に咽頭・尿培養でMSSAが検出されていた。胸部CTで遠位弓部に最大径65mmの動脈瘤を認め、周囲に血腫が存在した。大動脈瘤破裂と診断し、高齢でMSSAによる感染も疑われたが、入院前のADLは良好で、家族の強い希望もあり緊急手術を施行した。体外循環確立後に冷却し、循環停止として大動脈を切開し、順行性選択的脳分離を併用した。弓部大動脈の左外側に仮性瘤の形成を認め、白色膿汁様の液体が混在していた。小彎側には真性瘤を認めたが、仮性瘤との交通ははっきりしなかった。瘤を切除すると共に周囲をデブリドマン・洗浄し、4分枝付き人工血管を用いて遠位側をelephant trunk法で吻合し全弓部置換を施行した。術中採取し培養へ提出した大動脈壁からMSSAが検出された。術後発熱はなく、2週間で抗生物質を中止したが、その後2回の正中創部解離を来たしたため再度内服を継続し、2ヵ月間の投与でCRPは陰性化した。以後再燃はなく、リハビリ目的で転院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2008