発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008366077
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64歳女。胸背部痛、呼吸困難を主訴とした。入院時検査所見では高度の貧血、軽度腎機能低下を認め、血液培養でMSSA、尿培養でMRSAが検出された。胸部単純X線で心胸郭比65%、縦隔拡大と左第1弓の突出、両側肺うっ血と左肺野の透過性低下を認め、造影CTでは周囲に液貯留を伴った最大短径約80mmの胸部大動脈瘤破裂所見を認めた。感染性胸部大動脈瘤破裂と診断し、緊急手術を施行した。上行大動脈・左大腿動脈送血、上・下大静脈脱血にて体外循環を確立して全身冷却を行い、循環停止・逆行性脳灌流とし、大動脈切開後内腔より選択的脳循環を開始し、順行性・逆行性心筋保護液注入にて心静止を維持した。可能な限り末梢までの大動脈壁を切除し、左鎖骨下動脈分岐部より約10cm末梢の下行大動脈を離断した。人工血管を内腔に挿入し吻合した後、折り返した人工血管を引き出して、4分枝付き人工血管と端々吻合した。人工心肺からの離脱は容易であったが、出血傾向が強かったため、二期的に大網充填術を行うこととした。術後、熱発が続いたため創洗浄、デブリドマンおよび大網充填術、エンドトキシン吸着療法を行った。大動脈壁培養よりMRSAが検出され、当初使用していたvancomycinから、感受性のあるteicoplaninに変更した。気管切開チューブを術後54日目に抜去し、術後27日目のCTで分枝血流は良好であり、仮性瘤形成など感染再燃が疑われる所見もなかった。
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