胸部・気道損傷の治療
大血管の損傷 外傷性胸部大動脈破裂
川人 宏次
1
,
安達 秀雄
1湘南鎌倉総合病院 心臓血管外科
キーワード:
開胸術
,
胸部外傷
,
交通事故
,
人工心肺
,
大動脈破裂
,
低体温法
,
大動脈瘤-胸部
,
人工血管移植
,
緊急手術
Keyword:
Accidents, Traffic
,
Aortic Rupture
,
Heart-Lung Machine
,
Hypothermia, Induced
,
Thoracotomy
,
Thoracic Injuries
,
Aortic Aneurysm, Thoracic
,
Blood Vessel Prosthesis Implantation
pp.1032-1036
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007020974
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受傷後12時間以内の急性期に緊急手術を行った外傷性胸部大動脈完全破裂及び出血性ショック症例8例(男7例、女1例、平均36±19歳)を対象に、その治療方針及び治療成績を検討した。受傷原因は全例が交通事故であり、全例が大動脈の損傷部位は大動脈峡部であった。完全断裂が3例、2/3周性断裂が2例、3/4周性断裂が3例で、8例とも外膜が破綻しており、弓部から下行大動脈全体に及ぶ広範囲の縦隔血腫を呈していた。7例が左胸腔内に破裂し、胸腔内には多量の血液貯留を認め、そのうち2例は心嚢内へも破裂しており、心タンポナーデとなっていた。1例を除き、多発外傷を伴っており、多臓器損傷部位は四肢、胸郭、頭部、肺、内臓諸臓器など多岐にわたった。3例で腹腔内出血を認め、開腹手術を先行した。1例は開腹したが、明らかな臓器損傷はなく、試験開腹となった。1例を除き、全例がショック状態で、1例は手術室搬入時に心停止となり、心マッサージを行いながら手術を開始した。1例は受傷時に心停止となり蘇生術を受けていた。受傷から手術までは時間は4~9時間(平均6.4時間)であった。他臓器損傷の緊急止血処置に続き低体温循環停止法により下行大動脈人工血管置換術を行った。8例中7例を救命し、後遺症はなく、7例全例が社会復帰した。死亡した1例は術前に心停止した症例であった。平均手術時間は292±33分、平均人工心肺時間は126±36分、上半身循環停止時間は28±6分であった。低体温循環停止法は循環動態の不安定な症例に対する有効な補助的手段であった。
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