発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008148987
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78歳男。急性A型大動脈解離に対し前医にて上行大動脈置換術が施行され、4年後の胸部CTで中枢側吻合部仮性動脈瘤を指摘された。それから1年後の当科外来受診時、心雑音の増強があり、また心臓超音波にて大動脈弁閉鎖不全症の進行が認められ、手術目的で入院となった。胸部造影CTでは大動脈基部後壁側に肺動脈を圧排するように突出した最大径68mmの仮性動脈瘤を認め、マルチスライスヘリカルCTでは大きな内膜の断裂が確認された。心臓超音波では大動脈弁輪上左房側に突出した仮性動脈瘤、および中等度の大動脈弁閉鎖不全症を認めた。手術所見では、中枢側吻合部は左冠尖中央部から無冠尖にかけて人工血管と中枢側大動脈内膜が外れており、仮性瘤を形成していた。また、仮性瘤により大動脈弁輪が変形し中心部の接合不全を呈していた。Carboseal Composite Graftを用いた大動脈基部置換術を施行し、病理組織所見にて中膜平滑筋細胞の凝固壊死の所見を認め、吻合部仮性動脈瘤の原因としてgelatin-resorcin-formalinグルーによる障害が強く示唆された。術後経過は良好で、第26病日に独歩退院した。
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