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編集後記
宮崎 明美
pp.172
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200143
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“いつまで車に乗るつもりなんだ!”と販売員さんに言われながらも,81歳の義父が新車を買った.ハイブリッド車に乗ってみたかったらしい.3年後,坂道を上っているとき太陽がまぶしくてハンドルを切りそこね,大きな岩でできた塀にぶつけて車は大破.夫と二人で義父を説得.“塀の前に人がいなくてよかった.この歳になって交通刑務所に入ることになったらどうするのか!!”いつもはやさしい夫が,いつになく義父に対して真剣に話した.OTである私は,山の上に住む義父の生活を考えると…….夫も同じ気持ちだったと思うが,心を鬼にしての説得だった.そして義父はやむなく車を手放した.が,つい先日もいろいろな検査をクリアして免許の更新を果たした.86歳である.田舎で暮らす人にとって車は必需品.ずっと車と生きてきた義父にとってはなおのこと.免許を返納することは,どんな利点や特典を用意されても自分を失くすことに等しい.義父の心と暮らしを考えると,私たち夫婦も心が苦しい.
今回の特集で,全国で世界でOTが自動車運転にかかわっていることがわかった.藤田論文では運転という作業についてしっかりと分析されているだけでなく,各障害や高齢の軽度認知機能障害についても述べられている.適性相談や道路交通法の改正等,公安委員会の取り組みにも触れてあり興味深かった.どの筆者もOTの関与の必要性を述べている.障害がわかり,暮らしがわかるOTの役割は大きいと思う.力をつけて,この領域で活躍するOTが増えてくれることを望む.
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