特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
【コラム】心臓手術後の高乳酸血症—乳酸値が急激に上昇,遷延する症例には積極的な原因検索が必要
佐藤 瑞樹
1
,
讃井 將満
2
Mizuki SATO
1
,
Masamitsu SANUI
2
1倉敷中央病院 救急科
2自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
pp.204-210
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200255
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓手術後患者の高乳酸血症は,しばしば遭遇する合併症である。対応として,バイタルサインや術中のin/outバランス,術中術後の出血量,尿量,血行動態モニタリング数値を考慮に入れ,fluid challenge(輸液負荷試験)を第一に選択する場合が多いかもしれない。高乳酸血症は,患者のアウトカムと関連があるのか,あるとすればどのように関連するのか,また,それに介入を加えることに意義があるのだろうか。本稿では,まず一般的な高乳酸血症の発症機序や鑑別すべき病態を考えたのちに,心臓手術後の高乳酸血症の特徴について述べる。
Summary
●高乳酸血症は,組織低灌流による嫌気性代謝のみが原因ではない。ストレスに対する正常反応としての,好気性代謝でも起こり得る。
●一般的に高乳酸血症は予後不良と関連があるが,それは心臓手術後でも同様である。
●予定手術の場合,ICU入室時に高乳酸血症をきたしている症例や,入室6時間を超えて乳酸値が3mmol/Lを上回る症例の管理では,特に注意を要する。
●緊急手術はそれ自体がすでに高乳酸血症,死亡のリスクであることを認識する。
●遷延する高乳酸血症や急激な上昇を示す高乳酸血症患者では,積極的に腹部臓器の急性虚血性疾患や敗血症などの重大な病態を除外すべきである。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.