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増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅰ 生化学
乳酸
lactic acid
嶋田 昌司
1
,
松尾 収二
1
1天理よろづ相談所病院臨床病理部
pp.780-782
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103286
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検査の概要
乳酸はブドウ糖代謝(エネルギー生成)によって生成される副産物である.通常,好気的(酸素がある)な場合,1分子のブドウ糖は解糖系で2分子のピルビン酸,2分子のH2O,2分子のアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate,ATP)へと代謝され,その後TCA(tricarboxylic acid)サイクルを経て最終的には6分子の二酸化炭素(CO2),6分子のH2O,38分子のATPへと代謝される.しかし,嫌気的な(十分な酸素が組織に供給されない)場合は解糖系での代謝産物であるピルビン酸はTCAサイクルへと進むことができず,2分子の乳酸と2分子のATPに代謝される.
つまり,乳酸の増加は生体内において最も基本的なエネルギー代謝において必要十分な酸素が供給されていない,組織灌流不足があることを意味する.また,赤血球はミトコンドリアがなく,好気的条件であっても乳酸を生成し,細胞外へ放出している.
他にも高乳酸血症の原因としては,一時的な高酸素消費状態(痙攣,過剰な運動など)やアルコール摂取,癌,ある種の薬物使用や毒素など,組織灌流が正常であっても発生することはあるが,一般的には組織灌流不足による細胞レベルでの酸素不足が原因である場合が多い.
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