特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
8.非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)—NOMIプロトコルを作成し早期治療を目指す
佐藤 瑞樹
1
,
青松 昭徳
2
,
讃井 將満
2
Mizuki SATO
1
,
Akinori AOMATSU
2
,
Masamitsu SANUI
2
1倉敷中央病院 救急科
2自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
pp.193-202
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200254
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頻度はまれであるが,しばしば救命が困難である非閉塞性腸間膜虚血non-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)は,心臓血管手術後や透析患者に多いと言われている。発症機序に関しては,いまだ不明な点が多いものの,腸間膜の血管攣縮によって発症すると考えられている。特異的な症状・検査所見に乏しく,早期診断が非常に難しい。そのため,診断時にはすでに腸管壊死が進行し,多臓器不全をきたしていることがある。心臓血管手術の術後管理をされる読者の方々も,NOMIに直面し臍を噛む思いをされた方は少なくないと推察する。
本稿では,NOMIの疫学,発症メカニズム,危険因子,診断と治療について解説し,早期診断,早期治療を目的とした治療プロトコルを提示する。
Summary
●心臓血管手術後の非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は,まれであるが診断や治療が難しい重篤な合併症である。
●NOMIは上腸間膜動脈の攣縮が主病態で,体外循環中の腸管の微小循環障害が関与すると考えられている。
●術前危険因子として高齢,慢性腎臓病,利尿薬の使用,術中因子として長時間手術,術後因子として大動脈内バルーンパンピング(IABP)の使用,赤血球輸血,再開胸止血,ノルアドレナリンの使用などが挙げられている。
●NOMIの特異的な所見は少ないが,血中乳酸レベルを手掛かりに総合的に判断し,疑った場合には積極的に腹部造影CT検査および血管造影検査を行う。
●治療は,血管拡張薬の持続動注療法を基本に,開腹手術を組み合わせ,血管造影や開腹術の反復(セカンドルック)に対する閾値を低くした,集学的な戦略が有用かもしれない。
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