症例検討 鎮静
成人の長期人工呼吸管理—昏々と眠らせずに治療経過に応じて薬を調整
大塚 将秀
1
Masahide OHTSUKA
1
1横浜市立大学附属市民総合医療センター 集中治療部
pp.776-780
発行日 2017年8月1日
Published Date 2017/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200927
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症例
59歳の男性。身長165cm,体重50kg。48歳時に呼吸困難のため緊急入院し,特発性間質性肺炎と診断された。以後数回の入院歴があり,1年前から酸素化悪化のために在宅酸素療法が導入された。現在は,平地であれば自分のペースで歩くことは可能だが,駅の階段は途中で休まなければならない。3日前から旅行で当地を訪れていたが,昨晩から全身倦怠感があり,今朝より呼吸困難が増悪したため救急車で来院した。
来院時,応答は可能だが意識清明とはいえない。単純フェイスマスクで5L/minの酸素吸入をしている。呼吸数は35/minで呼吸補助筋を使用した胸式呼吸である。血圧は140/85mmHg,心拍数は110/minで末梢は冷たく,SpO2は85%,体温38.5℃である。動脈血液ガス分析では,pH 7.17,PaCO2 48Torr,PaO2 58Torr,SaO2 85%,HCO3- 17mmol/Lだった。
胸部CTの検査中にSpO2と意識レベルが低下し,痛覚刺激への反応も乏しくなったため,緊急気管挿管してICUに入室した。
気管挿管時に鎮静薬や筋弛緩薬を使用していなかったため,自発呼吸は残存していた。人工呼吸器はプレッシャーサポート換気としてFIO2 1.0,PEEP 5cmH2Oで開始した。肺胸郭コンプライアンスは小さく,呼吸補助筋の過剰な活動はなく200mLの1回換気量を得るために15cmH2Oのサポート圧を必要とした。SpO2は98〜99%だったので,90〜92%を目標としてFIO2を下げ,0.6とすることができた。
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