巻頭言
長期人工呼吸の将来
本松 研一
1
1県立宮崎病院
pp.123
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204590
- 有料閲覧
- 文献概要
私共はこの2・30年,麻酔や重症患者の治療のために,人工呼吸を行ってきた。初期は短い期間のことが多かったが,次第に長期化してきた。器械は麻酔器や鉄の肺から出発して,新しい人工呼吸器の開発が相つぎ,急速に精密化し,現在では,構造については,完全に理解することが困難なまでになってきた。
人工呼吸が重症患者の治療に果した役割については言うまでもない。一方,私共の懸命の努力にもかかわらず,肺病変の改善をみず,Adult Respiratory DistressSyndrome (ARDS)と呼ばれる状態に陥って死亡する症例も少くなく,人工呼吸の効果にも限界のあることを思い知らされてきた。当初は,原疾患に感染などの諸要件が加わったものと解されていたが,次第に,人工呼吸そのものも悪影響を及ぼすと考えられるようになった。ARDSの状態になると,肺のコンプライアンスは減少し,血液ガスの状態を好転させるには,高い加圧が必要となり,肺胞を破り,気胸を起す(Barotrauma)。以後の治療は困難を極め,予後は不良である。
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.