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あとがき
三村 將
pp.94
発行日 2025年1月1日
Published Date 2025/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770010094
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昨年の秋は日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞したことで日本中が沸いた。まことに喜ばしいことである。今回のノーベル賞では化学賞として,ワシントン大学のデイビッド・ベイカー教授と,ディープマインド社のデミス・ハサビスCEO・研究チームのジョン・ジャンパー氏の合わせて3人に送られたことも大きな話題となった。ハサビス氏はノーベル賞受賞者を輩出することでつとに知られる慶應医学賞を昨年受賞しているから(慶應医学賞を受賞してのちにノーベル賞を受賞するのは最近3年連続で過去11人にのぼる),さほど驚くには値しないのかもしれない。しかし,両賞を同年に受賞するのは初めての快挙であり,ものすごい出来事である。また,ノーベル物理学賞は,プリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と,トロント大学のジェフリー・ヒントン教授の2人が選出された。化学賞も物理学賞もいずれも人工知能(AI)の開発やその応用の業績に対して贈られたものである。
ここまでAIに対して科学的評価が高まると,それを使わないという選択肢はもはや人類には不可能かもしれない。しかし,最近,研究者が自分の研究にAIを活用することの是非,あるいはその方法や公開の仕方が多くの場面で問題になっている。本誌でも,論文作成に関して,調査や執筆に生成AI等をどのように使ったのかを記載するか,確認するかも議論している。いくつかキーワードやポイント等を入れてChatGPTにかけると,簡単に図を作ってくれたり,論文様のものを書いてくれたりする。便利で手軽なものほど,落とし穴も大きいと言えるのかもしれない。
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