- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今年の国際老年精神医学会(International Psychogeriatric Association:IPA)はスペイン北西のはずれにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラで開催された。再来年のIPAが日本老年精神医学会とジョイントで京都で開催されることもあり,私もその宣伝を兼ねて出席し,つい先日帰国したところである。サンティアゴは言うまでもなくローマ,エルサレムと並ぶキリスト教三大聖地の1つである。同地への巡礼の最古の記録は西暦951年と言うから日本では平安中期のことである。聖ヤコブ(スペイン名サンティアゴ)の遺骸が発見された当初,ガリシア地方に限定されていたサンティアゴ巡礼は次第にピレネー以北に拡大され,11世紀以降はヨーロッパ中に拡大した。今日では世界中から老若男女,さまざまな人々が帆立貝と杖に守られて巡礼に訪れる。巡礼者数はいまでも年々増えており,2018年には年間30万人を超えている。私の大学の医学部生も先日休学して世界放浪の旅に出て,その間にサンティアゴ巡礼を果たしてきた。IPAは2010年にもサンティアゴで開催しているから,よほどこの場所に思い入れがあるのだろう。
今回のIPAで面白かった講演の1つは,百寿者研究で知られるシドニーのサチデヴ教授の“Can we live to 150?(われわれは150歳まで生きられるか?)”というプレナリレクチャーであった。結論は,よほどのイノベーションがない限り無理である,という常識的だが,身も蓋もないものではあった(これすらも近年の加速度的な科学・技術革新を考えると,50年後はどうかわからないが)。しかし,一方で,われわれの多くは確実に100歳まで健康長寿を全うできるようになるだろうという裏のメッセージもあった。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.