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あとがき
三村 將
pp.1352
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200918
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今年の10月上旬に秋たけなわのボストンを訪れた。私がボストンに留学していたのは1992〜1994年のことであり,帰国して数年は頻繁に訪れていたが,その後は機会がなくなっていたので,今回の訪問は約20年ぶりであった。ぶらっと街中を散策してみると,様変わりしているところもあったが,以前住んでいたブルックラインの石造りのアパートメントや,毎日使っていた地下鉄は昔のままであった。
今回の目的はマサチューセッツ総合病院精神科のMaurizio Fava教授たちとの共同研究の打合せであったため,会議の合間に病院内を見学することができた。ご存知の方も多いと思うが,本病院内には有名な「エーテルドーム」がある。この階段教室型の講堂において,近代麻酔の始まりとされるエーテル麻酔を世界で初めて使用して,頸部腫瘍の患者の手術が行われた。1846年10月16日であるから,約170年前,日本では幕末のことである。「エーテルドーム」は手術の光景を描いた絵やさまざまな器具とともに,当時の面影をそのまま残している。慶應義塾大学の医学部にもよく似た階段教室の臨床講堂があり,学生時代のグランドラウンドが懐かしく思い出されるが,現在は新病院棟建設のために取り壊されてしまった。歴史を偲ぶ建物が失われていくのは,やむを得ない事情があるとはいえ,残念なことである。
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