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あとがき
三村 將
pp.208
発行日 2024年2月1日
Published Date 2024/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202587
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昨年(2023年)6月に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(令和五年法律第六十五号,以下,認知症基本法)がいよいよ本年1月から施行となった。超高齢社会が進展し,認知症とその前段階とみなし得る軽度認知障害の人が優に1000万人を超えるとされる今日,認知症の人の尊厳と希望を守るための法的枠組みが整ったことは関係者にとって大きな福音である。法のタイトルからは「共生社会」が強調されているが,個人的には国家戦略として「共生と予防」ないし「共生と予防,治療」のバランスを取っていくことが重要だと考えている。
認知症基本法の施行と相前後して,初の抗アミロイドβ抗体薬として承認を受けたレカネマブの使用が国内でも始まり,新たな認知症治療の選択肢として期待されている。しかし,レカネマブ登場の意義は単に医学的な薬物治療に留まるものではなく,むしろ共生と予防についても新たに学際的な議論を賦活するところにあるのではないかと思う。レカネマブの対象は軽度アルツハイマー型認知症と軽度認知障害とを包含した概念である早期アルツハイマー病である。しかし,認知症の早期であってもレカネマブの対象にはならない人への説明や治療戦略はどうするのか。軽度認知障害以前の前臨床期アルツハイマー病の人が臨床症状を生じることをどう予防し,食い止めるのか。さらに,すでに中等度以上の認知症の人への対応と共生の議論も活発になることだろう。
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