連載 めざせ 楽寿食・10
栄養管理と食事計画―食欲不振時の工夫
松月 弘恵
1,2
,
住垣 聰子
2
,
井上 典代
2
,
大沼 奈保子
2
1東京家政学院大学
2E-net
pp.855-859
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901409
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高齢者の食欲不振
食欲不振とは,食べたい,飲みたいという欲望が抑制された状態であり,高齢者の食欲不振はよく遭遇する症状である。これは若年者の食欲不振と比べて脱水状態,低栄養を引き起こしやすく生体に与える影響も大きいのが特徴であり,決して侮れない症状である。表1に食欲不振をきたす主な疾患を示したが,高齢者では癌や慢性疾患に罹患していることが多く,特に消化器疾患だけではなく血液疾患,心不全などの心疾患,感染症,内分泌疾患や呼吸器疾患などのあらゆる疾患が食欲不振の原因となっていることが多い。高熱を伴う急性感染症では必ず食欲不振を伴い,高齢者の肺炎の初期には食欲不振が20%にみられるとの報告もある。
さらに,疾患そのものが食欲不振の直接原因ではなく,発熱,腹水,鼓腸,疼痛,黄疸,高度貧血,浮腫などの症状が二次的に食欲を低下させていることや,消炎鎮痛薬や抗生物質などの薬剤による医原性の食欲不振もある。表2に食欲に影響する薬剤を示した。また,高齢者の食欲は不安や家庭内の問題,病気に対する悩み,環境の変化に対する不安などが原因でも起こり得る。
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