連載 あの人の思い出カバン・3
信念の黒子(くろこ)保健師―花の咲く木になるよりも,大地に根を張る草になりたい―カバンの持ち主:田野口光子さん(長野県須坂市)
村中 峯子
1,2
1社団法人全国保健センター連合会
2東京大学大学院医学系研究科
pp.558-565
発行日 2008年6月10日
Published Date 2008/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101010
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田野口光子さん(写真,表)の取材が始まって間もなく,内心,ため息をついた。「どうして毎回,(保健師って)こうなんだろう」。ため息のわけは,田野口さんの口からこぼれ落ちる台詞,「須坂は,保健補導員さんたちが熱心でしたから」「先輩たちが素晴らしかったから」で,自分には特別なものはないと語る。加えて,住民さんとの取り組みの話題になると,「本当にね,楽しかったのよぉ」と数倍,目を輝かせて語る。これでは住民活動の取材にはなっても,田野口さんのインタビューにはならない。
思案しているところに,後輩の保健師さんが加わってくれた。「田野口さんは住民さんからも慕われていて,“活動の思い出会”にも声がかかるほどです」「保健師になるべくして,なった人です」。おっ,それそれ待ってました! 胸中で小さくガッツポーズした瞬間,「あのときも,保健補導員さんたちが段取りしてくれて」「そうそう! 保健補導員さんの文集もこんなに」。あっという間に,2人のやり取りは,再び住民さんの話題になっていく。住民活動を嬉々として語り合う保健師たち。彼女たちには,住民さんが喜ぶ顔が何よりなのだ。自分たちが高い評価を得ることよりも,「(須坂の)住民活動をわかってもらえること」が何より本当に嬉しいらしい。
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