連載 対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術・1【新連載】
対応困難なケースに直面したとき
姫井 昭男
1,2
1大阪医科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山クリニック
pp.554-557
発行日 2008年6月10日
Published Date 2008/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101009
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はじめに
健康づくりの指針としてメンタルヘルスが謳われるようになりましたが,いまだメンタルヘルスに関してはさまざまなハードルがあります。
そのハードルの1つには,障害に対する偏見があります。メンタルヘルスに対する啓発がさかんな国では,障害をもつ人が暮らしやすいような整備が進んでいますが,現状の日本はといえば,ほかの先進国に比べて遅れているといわざるを得ないでしょう。つい最近まで,精神科で治療を受けることさえタブー視されていたのは周知の事実です。
この問題の原因の1つには,われわれ精神科医の医療外に向けた啓発活動がうまく機能しなかったことがあります。もう1つは,“右へ習え”式の日本特有のものの考え方により,障害をもつ個性を異種性として排除していったことや,障害をもつ者自らがその方向を選ばざるを得ない社会背景があったからと考えています。
ただ,うつ病に関しては,この数年で啓発が進み,以前よりかなり高い率で早期治療を始められるようになってきました。これは精神科医療にとって大きな進歩であると考えます。ところがその一方で,いままでは経験しなかったような問題とメンタル障害が融合した複雑なケースや,現代社会が生み出した新しいメンタル障害が増えてきています。これがメンタルヘルスに関わるもう1つのハードルであり,年々増加している傾向にあります。
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