講座 教育の方法
具体的授業展開のために—Ⅳ.生活指導(生徒指導)の研究
久保田 信之
1
1学習院大学
pp.177-181
発行日 1976年3月25日
Published Date 1976/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906972
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序 教育方法の1分野としての生活指導
学校を取り巻く諸条件は大きく変わった.義務教育と考えた方が妥当な高等学校から,半分近くが高等教育に進んでくる.しかも,その子供たちが,情報過多といわれる現代社会のなかで,もみくしゃにされているのである.従来は親子関係といった基本的な絆が陰に陽に機能しており,子供たちに安らぎをもたらし多くの文化遺産を伝達していたのである.すなわち,基本的な生活指導は家庭内で十分果たしていたのである.しかし,学校教育のウエイトが大きくなって家庭生活を圧迫し,‘学校教育の下請け’を,その小学校段階から強いるようになるに従い,生活指導の問題が,学校教育の中に逆流してきたのである.
もちろん,この生活指導問題は,家庭の崩壊にひとりよるものではない.子供の生活自体,家庭というわくを大きく超えて,小さくとも‘1社会人’として生活しなければならなくなってきたことを考える必要があろう.金銭感覚は大人以上にもっているし,テレビや雑誌といったマスコミの影響も大きく受けている.学校の往復時は大人と同じ社会のルールの中にいる.もはや年齢に関係なく,子供たちを社会一般から隔離して‘平和の園’におくことはできなくなったし,学校と社会とは深くかかわりあって存在しているのである.
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