人間形成の原理と方法
第2部 人間形成の方法(3)
扇谷 尚
1
1大阪大学人間科学部
pp.482-486
発行日 1974年7月25日
Published Date 1974/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906794
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第2章 人格形成への3つの道
3.実存分析による人格形成
‘自己への忠実さ’ないし,‘己を虚しくする態度’といった教師の人間としての在り方が,教え授ける知識や技術とは別のものと考えられるところの,‘人間存在を可能ならしめるものがないか’という課題を生徒に課することになり,これが生徒をして,人生の意味を見い出させるにいたることは,前号で明らかにしてきた.
ところで,生きることの意味を相手が見い出すきっかけとなる行為は,対話である.人格形成には,既述のように,1)知識を通しての場合と,2)人間存在を通しての場合とがあるが,いずれにせよ,真の人間の教師は,相手に話しかけることによって,その人間に生きることの意味を見い出させる力を持つ者である.そして相手に人間として生きることの意味を見い出させることのできる対話が,人格形成に重要な役割を果たすのであるから,この節では,対話の人格形成的構造を取り上げたい.この際,対話に慎重な配慮をはらう実存分析的ロゴテラピーによる医学的精神療法から学ぶことにしよう.
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