人間形成の原理と方法
第5部 人間形成における統合の問題
扇谷 尚
1
1大阪大学人間科学部
pp.177-180
発行日 1975年3月25日
Published Date 1975/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906869
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I.人間形成としての統合
われわれが教育を人間形成といってきたのは,人間が人間として主体的に社会に生きていく場合の,その人間の在り方を形づくるという意味である.鋳型どおりの形に仕上げるとか,どんな型の人間にでも思いどおりに形成するといったものではない.学習者に潜在している諸力を,全体的に解き放ち,開発することを通して,彼らの人間存在そのものの発展を目指す自己教育能力の育成が人間形成としての教育なのである.
この人間形成は,知識の教育(本論,第2部)や技術の教育(第3部)はもとより,人間関係の根本となる生活指導(第4部)も含むことはいうまでもない.しかし,教育の内容や教育の領域あるいは形態がどのようなものであれ,最後には,歴史的・社会的条件のもとで,その人の人間としての在り方の教育という一点に統一され,社会において正しい行動が展開できるような人に形成されるという点に重点がおかれている.
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