人間形成の原理と方法
第1部 人間形成の基礎理解(1)
安彦 忠彦
1
1愛知教育大学
pp.65-70
発行日 1974年1月25日
Published Date 1974/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906743
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‘人間形成’とよくいわれるものを一歩立ち入って検討しようとすると,意外に不確かな思いにとらわれる.それは主に‘人間’とは何かという明確には答え尽くせない問題を含んでいるためと,‘形成’という,どこでもいっでも起きている,ある形へ向かっての変化一般をばく然と意味している語があるためであろう.
しかし‘人間形成’とよばれる事実は確かに存在する.このつかみ所のない事実の解明には大別してこれまで,人間の内的条件を手がかりとする心理学的・生理学的・医学的・生物学的等々の接近方法と,外的条件に手がかりを求める社会学的・歴史学的・政治学的・経済学的等々の接近の方法とが行われてきた.また両条件を視野に入れた接近法としては,最も古くから哲学的な方法がなされてきたとともに,最近は上記の諸方法を総合的に組み合わせようとする試みも行われている.いずれも‘人間’理解のうえで貴重な成果をあげており,特に前2者の科学的な接近法の最近の成果は目ざましいものがある.
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