一般教養講座
人間形成の基礎にあるもの
長谷川 泉
pp.42-44
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202594
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■人間復興のかけごえ
アレキシス・カレルというフランスの生物学者がおります.1912年にノーベル医学・生理学賞を受けた著名な学者です.組織培養法の完成者であり,また臓器移植の上で大きな功績をあげた学者です.血管縫合術も完成していますから,外科の領域でもすぐれた業績をあげました.
このカレルに「人間—この未知なるもの」という本があります.カレルはすぐれた近代科学者でありましたがその反面近代科学が人間をスポイルすることについても嘆きを持っていました.自然科学万能の考え方で,人間を律してしまうことについて警告を発したものです.カレルは1944年に死んでいますが,カレルの死後もこの警告は意義を失ってはいないようです.なぜならば,20世紀の後半に入って,人間の運命は,ますます自然科学にふりまわされ,そのために不幸になりそうなけはいさえみえるからです.原子力の問題などはその最も大きなものでありましょう.
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