人間形成の原理と方法
第1部 人間形成の基礎理解(2)
安彦 忠彦
1
1愛知教育大学
pp.135-141
発行日 1974年2月25日
Published Date 1974/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906752
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第2章人間形成の基礎理論
先述のように‘人間’を科学的に解明する努力は,人間の内と外およびその相互関係から,これまで精力的に行われてきた.その内本稿では,主に人間を内側から理解する方法に重点を置いて,その意義を検討しているが,その際注意すべきなのは,外側から人間を規定している条件は,先に一言述べておいたように,一度人間の内的条件をくぐって屈折した形で影響を与えるというとこである.もとより外的条件には様々あり,あまり屈折せずにストレートに人間とその行動を規定するような種類のものもあれば,逆に内的条件をくぐることによって,全く正反対な形でそれらを規定するような種類のものもある.また,同一の外的条件でも内的条件の質や量によって,その影響の表れ方は異なる.しかし少なくとも,より人間に独自の形としては,動物のように,ただ受動的にその行動が外的条件によって直接的な規定を受ける,ということのない事態にこそ求められねばならない.
人間は確かに自然的存在であるが,それは動物的自然と人間的自然との2つから成る存在である.そして大きく見て,前者は外的条件に対して受動的であり,後者は能動的であるといえる.以下,この人間の受動性と能動性の観点を軸として,外的条件との関係を考慮しつつ,内的条件に関する主要理論のいくつかを不十分ながら要約的に検討し,人間形成という課題に対する意義と役割およびその限界を探ってみたい.
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