連載 社会思想史の旅・9
市民階級の成長と自由主義
田村 秀夫
1
1中央大学経済学部
pp.37-41
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906201
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政治的自由主義の成立
心の習慣あるいはムードとしての自由の要求は近代以前にも存在し,すでにみたように,イギリスの市民革命における各党派はそれぞれの立場から「自由」を主張した。専制君主チャールズ1世さえ,死刑を宣告された法廷で,「わたしはすべての臣民の真の自由のために弁じたのである」と語っている。だが,「自由主義の観念は,歴史的に,財産の所有と不可避的に関連をもっている。それが奉仕する目的は,っねに,このような地位にあるひとびとの目的である」(ラスキ)と指摘されるように,自由主義は,チャールズの王政に代わって「自由な共和国」の支配の座にっいた市民階級のイデオロギーとして,彼らの要求を合理化する役割を果し,この階級の成長に対応しながら,自由主義の内容も発展していくことになる。われわれはまず,政治的自由主義の確立者ジョン・ロックの母校,オックスフォード大学を訪ねてみよう。
ロンドンから汽車で2時間ほどで,中世以来の大学都市オックスフォードに着く。散在する30のカレッジを中心に構成されているこの街の中心に位置するカーファックスの塔か,あるいは市街を貫通するハイ・ストリートに面したセント・メアリ教会の屋上から眺めると,中世の修道院を想わせるような古びた石造りの建物と,緑の芝生が織りなす美しい景観が展望できる。
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