特集 保健活動と公共性—公的責任の現代性
あらためて,公衆衛生の「公」を問い直す
前田 秀雄
1
1東京都東久留米保健所
pp.264-269
発行日 1997年4月10日
Published Date 1997/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902853
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公衆衛生と“Public”
“Public”とは議会制民主主義を確立した18世紀のイギリスにおいて,町中のコーヒーハウス,酒場(パブ)に立ち寄っては政治,社会,文化について口角泡をとばして論議した有産階級の紳士たちに起源している。そして,議論しあう中から“Public”の“Opinion”=「世論(公論)」が生まれた。つまり現代風にいえば,“Public”とは参加型市民であり,“Public Health”とは,ウィンスローの定義を引用するまでもなく,「住民参加型保健活動」ということになる。先年,保健文化賞を受賞した熊本県蘇陽町での健康な町づくりをテーマとした健康むら長会議などは,このコーヒーハウスにおける論議を彷彿とさせる。
しかしながら,彼ら“Public”は有産階級のごく一部の男性,いわゆるブルジョアジーであり,限定版の住民参加だった。やがて,産業革命によって急増し組織化された労働者階級と,マスメディアの発達による世論操作により,この擬制的な民主主義は否定された。
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