特集 ティーチング・ポートフォリオで得られること
教育の質を問うティーチング・ポートフォリオをあらためて俯瞰する
栗田 佳代子
1
1東京大学大学総合教育研究センター
pp.886-891
発行日 2017年11月25日
Published Date 2017/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200856
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教員の業績評価のありかたの変化
大学の教育の質保証の流れ
大学教員としての責任には,教育,研究,管理運営そして社会貢献の4つがある。しかし,かつては「Publish or perish(研究業績を出せ,さもなくば消えよ)」といわれていたように,大学教員の活動の評価といえば研究であった。むろん,知を創造するという最高学府の責任を果たすうえで,教員の研究活動は重要であるが,教員の評価軸において大学の機能のバランスから考えれば研究偏重が続いてきたといえる。
しかし,昨今は大学における教育機能の質保証を行う方向性は確たるものであろう。大学設置基準改正にともなう大学の自己点検・評価の努力義務化(1991年)1),機関別認証評価の開始(2004年)1),FDの義務化(2007年)1),3つのポリシー策定と公開の義務化(2017年)2)などといった一連の動きは,大学改革の促進,特に教育の質向上・質保証をめざしたものである。こうした流れは,社会的背景として,大学に対する説明責任を求める考え方の普及,大学進学率向上などによる学生の多様化,グローバル化に伴う学生の流動性への対応や,インターネットの普及によるオンライン学習環境整備による教育のあり方の転換などに呼応したものといえる。
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