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あらためて「看護」を問う.まさしく,東日本大震災による未曾有の被害は,健康に対する安全と安心を守る社会システム全体の見直しを突き付けています.健康の仕組みやシステムでは立ち行かない事態は復興に向けた人々の希望に大きな陰を落としています.日野原重明先生は,震災からあらためて「看護」への期待を次のように語っています.『もはや救命を旨とする医療ではないことは周知のとおりです.被災された方々にこれから継続して必要なのは心のケアである,心身の健康に向けた,適切で具体的な援助であり,誰にでも約束されるべき「日常」という営みが将来にわたって守られることです.それらは,まさしく「看護」にほかなりません』そして,『これからの看護は,医療をも包含する,ケアという大きな傘のもとで,ケア全体をその最前線で牽引していくことが求められています.医療中心から看護主体のケアへ変わるべきときを迎えて,すべての看護職者が機動性に富んだ判断と行動を示していかれることが求められています』と結んでいます.先生は,〈個〉〈家族〉〈コミュニティ〉〈社会〉の各レベルにおいて,看護主体のケアにより心身の健やかさを糧に希望に満ちた「日常」の営みを保証するための組織的な取り組みの重要性を指摘しています.
公益社団法人日本看護科学学会では,いち早くこの社会的使命を果たすために,日本看護系学会協議会との連携により,「災害看護支援事業」を立ち上げ,推進しています.本学会は,現在のところ看護系学会のなかでは唯一の公益法人格を有しており,災害看護活動を支援するための募金に対する税控除などの機能を果たすことができます.本学会をはじめとする看護系諸学会が連携し,有機的な災害支援事業の展開に資することにより,看護主体のケアの真価が発揮されると信じています.
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