巻頭言
わが国の福祉に思う
大島 峻
1
1医療法人財団敬和会時計台病院
pp.1009
発行日 1993年12月10日
Published Date 1993/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107498
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リハビリテーションの究極の目的は“自らの意思による主体的・自主的な生き方の保証”にあると言われている.現状を顧みると目標達成までの道のりは遠く,この機会に一医療人として福祉に対する一私見を話してみたい.
最近経験した,世間でよくある話を例に取ってみよう.
1)72歳,脳梗塞で右片麻痺,失語症の男性が閉じ込もりを防ぐために市のデイサービスを申し込んだ.定員が一杯なので半年から1年待機しなければならないと言われた.
2)78歳,クモ膜下出血後の半昏睡の女性が脳性小児麻痺の娘に看病されながら鼻腔栄養で在宅中.拘縮と意識障害が強くて福祉タクシーで病院にも連れて行くこともできない.“一度お風呂に入れてあげたい”と言う娘の希望がなかなかかなわない.
3)80歳の失行症を持った右麻痺の女性.4畳半の自分の部屋から居間に行くのは1日3回の食事の時だけ,あとは自分の部屋で寝たきり.“座敷牢にいるみたい”と言った言葉が忘れられない.
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