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はじめに
今,わが国の精神医療・福祉施策は激動の最中にある。その変化は2002年12月の社会保障審議会精神障害分会報告書10)に始まる。そこには「入院中心から地域生活中心に」が基本的なスタンスとなり,報告書の中に現在「受け入れ条件が整えば退院可能な入院患者が7万2千人」が存在するという具体的な数字が示された。この数字の正確さについては議論があるところであるが,具体的な数字が示されたということに大きな意義があった。報告書の準備が進む中で,厚生労働省は精神保健福祉対策本部を組織し,報告書を受けて中間報告2)をまとめた。そこには「普及啓発」「病床機能」「地域生活支援」が3つの大きな施策として掲げられ,それぞれの検討会が組織され,その報告書が2004年3月から6月にかけて次々に出された1,6,8)。その報告内容をもとに「精神保健改革のビジョン」7)が9月に出され,いきつく暇なく「改革のグランドデザイン」5)が提言された。そして今それを骨子として「障害者自立支援法」が国会に上程されている3)。この非常に急激な変化の流れを図1に示した。
その一方で,今後の精神医療・福祉に大きな影響を与える2つの流れがある。その一つが精神障害者を雇用の義務の対象にすることを目指した動きである。精神障害者の雇用促進等に関する研究会が2002年に発足し2年間の検討を行い9),労働政策審議会の議論を経て11)「障害者雇用促進法」改正案4)が今国会に上程された。もう一つは「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(心神喪失医療観察法)」である。2003年7月に成立し,今年(2005年)7月に施行が迫っている。そして今その運営に従事する人材の養成のために研修が行われている。
本稿ではこのような急激な流れの概要とその問題点について論じる。
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