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はじめに
国際規模で行われる疫学研究であるGlobal Burden of Disease Study(世界疾病負担研究)において,腰痛は,健康でない状態で生活する年数(years lived with disability:YLDs)を指標とする調査で,1990年から2016年まで不健康である要因の第1位となっている1).本邦においても,厚生労働省が実施している国民生活基礎調査における病気やけがなどによる自覚症状のうち,腰痛の有訴者率は毎年,男性で1位,女性で2位となっている2).
近年のシステマティックレビューにおいて,運動療法は疼痛軽減や能力障害の改善に対し高いエビデンスを有し3,4),各国の診療ガイドラインにて推奨されている5,6)ことに鑑みると,腰痛の治療・予防において,われわれ理学療法士が果たすべき責務は非常に大きいと考えられる.
腰痛に対する運動療法としては,エアロビック運動や筋力増強運動,筋持久力トレーニング,ストレッチングなどが用いられる3).前述のように,運動療法は広く推奨されているものの,効果的な運動療法の種類を明確に示すエビデンスはないのが現状である3,7).その理由の1つとして,腰痛の原因が複雑多様であるため,器質的な病態に基づく効果的な運動方法の確立が困難であることが考えられる.しかしながら,腰痛患者に対し「何でもいいから運動を」と指導するのみでよいのであろうか.臨床において,より効果的な運動療法を実践するためには,これまで報告されている知見を十分に精査し,どのように適用していくかを検討する必要がある.そして,その結果を集積し,さらに質の高いエビデンスを構築していく必要がある.
腰痛に対する運動療法のなかでも,Williams体操8)やMcKenzie体操(法)9)といった治療体操は,腰痛体操として有名である.運動方法をパンフレット化し,患者への指導に用いている施設も多いと思われる.運動指導として簡便ではあるが,簡便であるがゆえに,個々の患者への適応について十分に検討されることなく,画一的に行われている可能性もある.
本稿では,まず腰痛の原因と分類について概説し,腰痛体操の適応と効果に関するエビデンスについて紹介する.
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