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はじめに
非特異的腰痛の頻度については,2001年にThe New England Journal of Medicineに発表されたDeyoらの論文1)では80%程度と報告されており,頻度の非常に高い臨床的概念である.しかし,その概念・病態については,いまだ明確でない点が多いのが現状である.腰痛の症状と単純X線所見が必ずしも相関しないことは,以前から認識されていた事実である.すなわち,単純X線所見やMRIなどの画像所見があまり診断の役に立たないような腰痛症を非特異的腰痛と分類してきた経緯があり,下肢症状を有するような腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症,重篤な脊椎病変の可能性(重度骨粗鬆症,腰椎圧迫骨折,腫瘍,感染,炎症性疾患,先天奇形など)を除外したものを総じて非特異的腰痛としてきたのである.腰痛症診断において,こうした簡単に時間をかけずに診断可能な画像診断などを重視してきたことが,非特異的腰痛をめぐる諸問題を生じさせてきた根底にあるように感じている.しかし,これも「非特異的腰痛:non-specific low back pain」という用語そのものが,欧米のプライマリーケア医により提唱されてきた概念であることを考えると,致し方がないとも考えられる.プライマリーケア医における腰痛症診療では,red flagsを除外することが最優先課題であると考えられるし,それ以外の腰痛に関しては,彼らにとってはある程度似通った運動療法や薬物治療となるため,詳細な確定診断を急ぐ必要性が乏しかったのではないかと思われる.
そういった意味では軽視されがちな非特異的腰痛であるが,わが国の腰痛症診療を考えると,多くの腰痛症患者はこの非特異的腰痛にて病院を受診し,適切な治療を希望されているわけである.したがって,こうした腰痛に関してもまた正確な診断を行い,引き続く適切な治療を行う必要があるのである.また,医療保険システムの違いが大きいとはいえ,本邦ではこうした腰痛症患者に対してはじめから専門医である整形外科医院やクリニックで診療を行っているという診療上の大きなメリットがある.本稿では,わが国における腰痛症診断の実態調査として山口県腰痛study3)のデータを示しながら,非特異的腰痛のわが国の現状について報告する.また,丁寧な診察や問診などの重要性について述べるとともに,診断に基づく適切な腰痛症治療の可能性について示していきたいと考えている.
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