臨床経験
腰痛に対する体操療法
日下部 明
1
,
遠藤 尚暢
1
,
川村 正典
1
,
猪苗代 勇
1
,
松木 昇
1
Akira KUSAKABE
1
1東北大学医学部整形外科学教室
pp.669-676
発行日 1974年8月25日
Published Date 1974/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905032
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はじめに
腰痛を人生のいずれかの時期に経験するものは人類の80%以上を占めるともいわれ,事実これらの患者が整形外科を訪れるものの大多数を占めている.その源は人類の進化の過程における直立姿勢の獲得に発し,脊柱の静的あるいは動力学的姿勢の異常や,脊柱の機能的単位をなす脊椎・椎間板,ならびに椎間関節・靱帯・筋等の周囲組織の器質的変化またはそれらの不均衡にあると考えられているが,多くの腰痛はこれまでのclinical entityによる各種疾患に診断することの困難ないわゆる腰痛症が多数を占めている.その中には現代社会におけるストレスや不安に基づく感情的要因(emotional factor)や,運動不足による筋力の低下や姿勢の変化によるものも含まれ,腰痛がいわば現代に生きる入類の宿命の1つとなつているような感じさえする.われわれ整形外科医にとつてこれらの腰痛疾患の解明とそれに対する各種の治療法の確立が望まれ,中でも大部分を占める保存的治療をよりlogicalなものとすべく検討することが重要な課題の1つであろう.わが国における一般的な腰痛に対する保存的治療は牽引療法や温熱による理学的療法,あるいは過剰とも思える投薬・注射に頼つているのが現状のようである.しかしながらここに古くより行われてきた整形外科的治療体操の価値と意義を見直す必要があろうと考えられる.
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