Japanese
English
問題点の検討
「非特異的腰痛=85%」はどこからきたのか
Who taught us patients with non-specific low back pain account for 85% of all backache patients?
相澤 俊峰
1
T. Aizawa
1
1東北大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Tohoku University School of Medicine, Sendai
キーワード:
non-specific back pain
,
pathoanatomical diagnosis
,
Deyo RA
Keyword:
non-specific back pain
,
pathoanatomical diagnosis
,
Deyo RA
pp.139-144
発行日 2020年2月1日
Published Date 2020/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_139
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は じ め に
2010年代はじめ,本邦では原因が特定できない「非特異的腰痛」が腰痛全体の85%を占めると書籍や雑誌,インターネット,講演会などで喧伝された.かくいう筆者もそのように喧伝した一人で,「非特異的腰痛=85%」のグラフを提示した講演を何回か行った.日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修する『腰痛診療ガイドライン2012』も,「下肢症状を伴わない腰痛の場合,その85%では病理解剖学的な診断を正確に行うことは困難である.」1)と明記した.『腰痛診療ガイドライン2019』では,「その原著では,機械的腰痛には腰椎捻挫(あるいは特発性腰痛)70%,椎間板・椎間関節の加齢変化10%などを示して “おそらく85%程度は病理解剖学的診断を正確に行うことが困難” と記載された.その根拠は米国の総合診療医の情報を統合したものであるため,その正確性と詳細は不明であった.」2)と改められている.しかし,筆者をはじめ多くの脊椎外科医,整形外科医が,「非特異的腰痛=85%」は実情とそぐわないと疑問に感じたのではないであろうか.にもかかわらず,この数字がこのような媒体を通して整形外科医のみならず,一般市民にも浸透した.この「非特異的腰痛=85%」はいったいどこからきたのであろうか.本稿ではこの問題を解き明かしてみたい.
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