Japanese
English
特集 リハビリテーションに必要な産業医学の知識
非特異的腰痛
Non-specific low back pain
松平 浩
1
Ko Matsudaira
1
1東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座
1Department of Medical Research and Management for Musculoskeletal Pain, 22nd Century Medical and Research Center, Faculty of Medicine, The University of Tokyo Hospital
キーワード:
バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
,
層化(サブグループ化)
,
恐怖回避思考
,
エクササイズ(運動療法)
,
認知行動療法
Keyword:
バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
,
層化(サブグループ化)
,
恐怖回避思考
,
エクササイズ(運動療法)
,
認知行動療法
pp.517-526
発行日 2015年6月10日
Published Date 2015/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200258
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はじめに
世界疾病負担研究(Global Burden of Disease Study, 2010)において,腰痛は,Years Lived with Disability(YLDs),つまり健康でない状態で生活する年数を指標とする統計で,289の疾患や傷病のトップにランクされている1).厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査の概要」において,国民の代表的愁訴(有訴者率)が,腰痛(男1位,女2位),肩こり(男2位,女1位)であることはよく知られている.同じく厚生労働省が公表する業務上疾病の発生件数(休業4日以上)でも腰痛は,全職業性疾病の約6割を占め,長年に渡り第1位である.生涯有訴率は80%を超え2),再発再燃を繰り返しやすく,発症後2/3は1年後にも有症状であるとされ3),慢性疼痛の部位としても第1位である4).
これらのデータは,従来型の腰痛対策が奏功しきれていないことを露呈したデータとも解釈できる.「人間工学的アプローチ」は重要であるが,それだけでは十分とはいえない.腰痛には,画像診断と安静指導が必ずしも有用とはいえず,心理社会的因子が発症および遷延化・予後に強く関与すること(表1)などの理由から,仕事や日常生活中に生じたり感じたりする多くが相手を見極めきれない“非特異的”な範疇とされてしまう5〜7).腰痛予防・治療法がいまだ確立されていないことが現状では必然ともいえよう.
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