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膝前十字靱帯損傷の臨床や研究は20年以上前から常にスポーツ医学のトピックであり続けたと言って過言ではないだろう.手術方法のみならず,再建靱帯の特性,術後の理学療法,復帰基準,予防プログラムなどが次々に論議されてきた.徐々に手術方法もその後の理学療法も落ち着いてきたかにみえる.しかしながら,この小さな靱帯が運動中にどのような挙動を示すのか,あるいはパフォーマンスにどのように影響しているのかについての解明はまだまだ長い道のりである.そこで本号では動作に焦点をあてた特集を企画した.エディトリアルで川島敏生先生には理学療法の変遷を中心に背景を踏まえ,お書きいただいた.手術方法と動作の重要性,理学療法士との連携については内山英司先生にまとめていただいた.競技特性や受傷好発動作については高橋佐江子先生に疫学調査の結果をご執筆いただいた.また特に評価に重点を置いた面からは,医療機関内での評価課題を森口晃一先生にご提供いただき,また吉田昌平先生にはパフォーマンスの関係をご教示いただいた.計測機器のないグラウンドで長い間動作分析を地道に続けてこられた安藤貴之先生からは大変ユニークな動作分析方法をご教示いただいた.
先生方からの原稿をいただきあらためてその洗練された考え方に触れ,しばし時間の過ぎるのを忘れてしまった.前十字靱帯損傷が生じるのは練習中や試合中である.そして手術後には理学療法を含めてさまざまなトレーニングをしなくてはならない.選手は試合に勝っても,負けてもやはりトレーニングをする.理学療法士も自らの技術を高めるためには,自らのトレーニングが必須であり,その一つはこのような特集記事からの知見を得ることである.いかに実践に結びつけるかについて自分との対話も必要になろう.このあたりはアスリートが立てる明確な目標から私たちも学ぶことが多くあるように思う.われわれも当然のことながらトレーニングが必要なのだ.
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