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新元号になり,新たな歴史を刻む必要があるのは理学療法も同様であり,この『理学療法ジャーナル』も徐々に生まれ変わりつつある.本号の特集は「全体像を把握する」という古くて新しい,また少々捉えどころの難しいテーマである.全体の反意語は部分,個別であり,対象者を1人の人間として,しかもその背景を考慮することでこそ理学療法のダイナミズムもあるということには反論はないと思う.バイアスはどちらかというと嫌われるものであり,それは人としてどうあるべきかという理念に結びついているからでもある.しかしながら,臨床における理学療法は常に具体的なものでなければならない.「全体像を把握することは重要である」ことは間違いないが,企画段階で「全体像」というキーワードでの理学療法関連文献はほとんど検索できなかったことに対しては奇妙な感じもした.
上記の観点から本特集では,理学療法を全体像として捉えておられる先生方にご執筆いただいた.下島氏は,「全体像」で,唯一検索できた著者である.論文執筆にあたり新たな設定を設けてくださり,分析を行っていただいた.西守氏には症例提示から重要な統合と解釈の具体例を挙げていただいた.症例も広範囲に渡っており,読者の対象疾患と重なる機会が多いと思われる.星氏からは現在までの理学療法の「捉え方」を広範囲に及ぶさまざまな視点からおまとめいただいた.江戸氏からは世界のトレンドとしての論理展開をベースとした重要な示唆をいただくことができた.また私事ながら,昨年度在外研究で海外にいた際に読んだ多くの書籍のなかで,最も強いインパクトを受けた赤羽氏に依頼したところ快くお引き受けくださり,人として必要な決定プロセスに関する重要な視点をいただいた.
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