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あとがき
坂本 穆彦
pp.1634
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101485
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遺伝子に関連する話題は,依然として医学・医療界の時代の寵児の位置を保ちつづけている.本誌51巻増刊号で遺伝子検査を取り上げた背景には,根底にこのような流れへの対応という側面がある.ただし,このテーマに関しての類書は巻間にて容易に目にすることができる.したがって,他書にはない切り口が本書には求められるわけである.編集に際しては私どもなりにいくつかの工夫をこらした.まず,全体の構成の中で,「解析技術」の章では技術の展開の時系列を意識し,検査前・検査後の事項についても並列して配置した.さらに検査技術の解説は検査対象を「a.核酸レベル」から「c.蛋白質レベル」までの大枠の中に順を追って並べるようにした.このほかにも遺伝子検査にまつわる諸問題につき,倫理面,社会との関連などについても言及した.
遺伝子検査はこのように,今日の分子生物学的知見・技術をフルに動員しで精緻に組みたてられている.しかしながら,この体系が医療や予防医学の現場でどれほど用いられているかは,常に問われるべき大きな問題である.“がんは遺伝子の病気である”といわれる.したがって,遺伝子を検査すれば病気がわかるはずである.しかし,現実にはすべてのがんに,臨床応用可能な遺伝子検査が確立されているわけではない.今回の時点でのこのギャップがいかなる実態をもつかを理解していただくための手段として,本書のもつ意義は大きいと考えている.「遺伝子診断の実際」の項には多くの疾患を例に挙げて解説がなされている.ここにはがん以外にも,国民的な注目を浴びている代謝性疾患・神経疾患などが扱われている.個々の疾患ごとの遺伝子検査の現状がおわかりいただけるはずである.
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