Japanese
English
特集 第30回 脳のシンポジウム
神経疾患の分子遺伝学
ハンチントン病の分子遺伝学
Molecular genetics of Huntington's disease
金澤 一郎
1
1東京大学医学部脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Institute for Brain Research, University of Tokyo.
pp.1015-1018
発行日 1995年12月10日
Published Date 1995/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900706
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
遺伝病を引き起こす遺伝子異常には,いくつかのパタンがあることが古くから知られている。染色体の数や形の異常以外では,たとえば一つまたは数個の塩基の変異による異常(すなわち点突然変異),遺伝子の一部あるいはすべての大きな欠失,遺伝子の挿入,重複あるいは逆位などがそれである。ところが,ここ2~3年の間にこれまでまったく知られていなかったカテゴリーの遺伝子異常があることが分かってきた。これがいわゆる「三塩基リピートの伸長(triplet repeatexpansion)」である。この形式の遺伝子異常をもつ疾患は,現時点では脆弱X症候群2種,筋緊張性ジストロフィー,球脊髄性筋萎縮症,ハンチントン病,遺伝性脊髄小脳萎縮症1型,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の7種類が知られているが,恐らく今後さらに増えてゆくであろうと思われる。また興味深いことにそれらすべてが神経・筋疾患であり,その多くは表現促進(anticipation)を示すという特徴がある。本シンポジウムでは,この内,ハンチントン病の遺伝子異常についてのわれわれの研究結果を簡単に紹介することにする。
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.