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本年9月下旬に日本神経病理学会と国際神経病理学会が東京で合同開催され,インディアナ大学のBernardino Ghetti教授が招待演者の1人として来日された。その機会を利用して私の大学でも講演をしていただいたが,その折に彼のCV(curriculum vitae)をみて驚いたことがある。Ghetti教授はもちろん神経病理学を専門とする神経内科医だが,精神病理学にも造詣が深く,さらに5年にわたってオハイオ州シンシナティの精神分析研究所で精神分析のトレーニングプログラムを受けていたのである。講演していただいた後,食事をしながらそのことについて尋ねると,神経内科医は精神科の知識を持っていなければならないし,精神科医は神経内科のことをもっとよく知らなければならないと話していた。ほぼ同じことを昨年秋に同じく教室で講演していただいたオーストリアのインスブルック医科大学精神科教授で医学部長であるFleischhacker先生からもうかがったことを思い出した。神経内科と精神科に関してお互いの知識を持つ必要があるということは私もまったく同感である。
神経内科の専門医問題をめぐっては,今年度から始まった日本専門医機構が認定する枠組みの中で,神経内科は基本領域の内科の上に立つサブスペシャリテイとなっている。確かに神経内科医は内科医としての幅広い知識と技術の習得が必要である。しかし,その一方で諸外国ではneurologyは内科の一分野というよりは独立した領域であることが多い。日本神経学会は近い将来に神経内科が内科から独立すること,そして脳神経内科と名称変更することを決議しているが,この問題の成り行きはともかく,神経内科医には内科全般の知識とともに,ぜひ精神科の基本的知識も持っていていただきたい(その逆も真である)。
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