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あとがき
三村 將
pp.890
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202701
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1980年代の終わりに精神科病院に勤務していた頃,不思議な認知症の患者さんを担当した。家事がうまくこなせず,テレビのニュースにも関心を示さなくなり,前医でアルツハイマー病と診断されていた。しかし,発話が極端に減少し,さらに構語障害や嚥下障害も認めるようになり,普通のアルツハイマー病とは思えなかった。両上肢の筋力が低下し,舌や母指球にも萎縮を認め,両腕をだらんと下げて背中を丸めながら病棟をすたすたと歩く姿は特徴的であった。認知症に運動ニューロン病を合併しているのだろうかと思って悩んでいたら,神経病理をご指導いただいていた故・加藤雄司先生から宮崎の三山吉夫先生の論文を教えていただき,目からうろこが落ちたような思いをした(Mitsuyama Y and Takamiya S. Arch Neurol, 1979)。いわゆる三山型の「運動ニューロン病を伴う初老期痴呆」である。今でこそALS/FTLDとしてよく知られた概念であるが,当時はそのような例を経験した人はまわりにいなかった。三山先生がnew entity?とされていたことが印象深く,やはりアルツハイマー病ではないのだと納得した次第であった。こういう症例は続くときは続くもので,故・小阪憲司先生にもご指導いただきながら,だいぶ遅れたが,合わせて3例の臨床病理経過を報告させていただいた(Mimura M, et al. Neuropathology, 1998)。
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