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あとがき
三村 將
pp.104
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201719
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2020年11月23日に私にとって大変思い出の深い患者さんが亡くなった。享年62歳,胆管癌であった。彼女は私が米国留学から帰国して東京歯科大学市川総合病院に勤務していた頃,横浜市立市民病院の田辺英先生からの紹介で,精査のために転入院となった方である。30代半ばで発症したヘルペス脳炎で,急性期を過ぎたのち,比較的軽度の前向健忘とともに著明な逆向性健忘が残存していた。この患者さんの症例報告を本誌の前身である『脳と神経』に報告している1)。主なポイントは,顕著な逆向性健忘を呈してはいたが,その中核は極めて個人的なエピソードである自叙伝的記憶の障害であり,一方で社会的出来事(ニュースなど)や個人的意味記憶(担任の先生の名前など)は比較的保たれていた点である。同じく著しい逆向性健忘を示すアルコール性コルサコフ症候群とはパターンが違っていて,これを右海馬の病変に伴う過去の事象に関する視覚情報処理や視覚イメージ想起の低下と関連付けて考えた。
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