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あとがき
三村 將
pp.126
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200102
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北園先生による今号のポートレイト「勝木司馬之助 医の心人の心」を読ませていただき,大きな感銘を受けた。勝木先生は,水俣病やカネミ油症の原因究明や久山町研究の創始など,研究者としても優れた業績を残したが,「医の心」を重んじる素晴らしい臨床医であった様子が如実にうかがえた。「医者は患者さんから学べ」という恩師武谷 廣先生の教えを忠実に守り,患者さんの立場に立って誠実に医療・医学に取り組んだという。九州大学教授退官にあたっての最終講義でも「内科医というのは,人間として優れた常識人であり,知識人としても,あるいは医学者としても,基本的には水準の高い内科学を常識として持っている人でなければならない」と述べているのは,まさに医師かくあるべしといったところである。
医師の常識(良心),physician's common sense(conscience)とはいかなるものであろうか。昨今,さまざまな場面でこの問題がクローズアップされているが,おりしも11月には安楽死・尊厳死をめぐって医の倫理を考えさせるニュースがあった。末期の脳腫瘍を患った米国の若い女性が11月1日に自らの命を絶つと予告する動画をインターネット上で公開し,その動画を数百万人が閲覧して話題を呼んだ。治療法もなく,激しい頭痛に悩まされ,これ以上苦しむ前に自ら死ぬことを決めたこの女性は夫ともに当時住んでいたカリフォルニア州から,米国内で「死ぬ権利」が認められているオレゴン州に移り住み,その権利を行使した。
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