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あとがき
森 啓
pp.1458
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200939
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パイプオルガン
本号は,付録として動画が視聴できる特集である。百聞は一見にしかずとは本特集説明の一言と思いついた。実臨床で患者を診るには及ばないが,動画のパワフルさに加えて解説も要を得ている。言うまでもなく本特集は各論文著者の平素の研鑽の表れであり,診療のお手本として多くを学ばせていただいた。専門の診療領域の医師だけではなく専門外の医療者にも合点がいくこと,学ぶことが多いはずである。手足,体幹の位置,動きを理解するのは容易ではないが,運動障害により改めて正常な動作をみつめ直す機会になると信じて疑わない。
期を一にして深秋のころ,青森弘前の地で東北随一なるパイプオルガン演奏会に誘っていただいた。かねてより右手と左手の非対称な動作による楽器演奏に関心があったこともあり,水木順子女史の演奏を聴くために東奥義塾高校の礼拝堂を訪れた。本格的なパイプオルガン演奏に触れる機会は得がたいものであり,バッハの古典曲を堪能することができた。全1時間半ほどの演奏会の最終14曲目に演奏された『プレリュード フーガ変ホ長調BWV552』は13分にも及ぶ大作で,単に長い楽曲というだけではなくパイプオルガンの持つ重低音から透き通るような高音まで強弱交えて聴衆を魅了した。演奏者の手の動きを遠目に見据えると,手足がいくつあっても足りない動きに感心する。また,打楽器ピアノと違い空気を利用したオルガン音楽であるためミリ秒差でフィンガータッチと音がずれていることがわかる。音のずれ込みには深く嚙みしめるような感触があり,外界に飛び出る協和音と成るまでの熟成時間にも感じた。
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